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元検事・弁護士粂原研二による刑事事件の実務

無罪事件から学ぶ刑事弁護 その(1)

初期供述

事件の概要

ある地方で起きた殺人等の事件です。被害者の遺体発見現場の近くに住み、同じような前科がある被告人が逮捕、起訴されましたが、被告人は、捜査公判を通じ身に覚えがないとして否認していました。
警察は、逮捕前に被告人宅等の徹底した捜索差押えを行いましたが、凶器はもとより、被害者の所持品・毛髪・血痕等の物証を得ることはできませんでした。逮捕の根拠となったのは、不鮮明な防犯カメラの映像と遺体発見現場付近で被害者と被告人に似た男が一緒にいるのを見たという複数名の目撃者の供述でした(もちろん被告人に同種前科があることも逮捕するに当たっての重要な「証拠」のひとつとして評価されたと思います)。防犯カメラの映像は、もともとそこに映っている人物が被告人であると認定できるような代物ではありませんでしたから、公判では、目撃者の証言の信用性が熾烈に争われた結果、裁判所は無罪を言い渡しました。証言内容の変遷、視認条件の悪さ等を理由に裁判所は証言の信用性を否定したのでした。
検察官は、その他にもいくつかの理由を挙げて被告人以外に犯行を行える人物はいないと主張しましたが、採用されませんでした。
ところで、本件目撃証人のひとりは、被害者の遺体が発見されて間もなく行われた地取り捜査の段階では警察官に対し、被害者と一緒にいた男について、若くて目が丸かったなどと供述していましたが、最後には被告人の人相と合致する目が細い男で年齢はよく分からないなどと供述を変遷させていたのでした。


ポイント

被害者や目撃者の供述の信用性を判断するためには、その人たちが初めにどういう供述をしていたかを確認することが極めて重要です。警察が犯人像を絞り込んでいない段階であり、マスコミ等の報道による影響も受けておらず、事件発生から間もない記憶の鮮明な段階における生の供述だからです。本件における目撃者のひとりの初期供述は、被告人とは全く別の人物を表現するものでしたが、変遷を重ねて被告人に似る人物を表現するようになっていったのでした。
初期供述を知るには証拠開示が是非とも必要ですが、証拠開示問題については別に述べることにします。



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