東京の刑事弁護・刑事告訴のご相談は03-5293-1775まで
東京の刑事弁護・刑事告訴のご相談は03-5293-1775まで
刑事弁護・刑事告訴のお申込み

元検事・弁護士粂原研二による刑事事件の実務

無罪事件から学ぶ刑事弁護 その(3)

悪いのは誰だ (1)

事件の概要

ある地方で起きた廃棄物処理法違反事件です。被告人は、土木会社の社長で、大量の廃タイヤを不法に捨てたとして、経営する土木会社とともに起訴されたのですが、実はこのタイヤは、ある運送会社の社長が数年前から自分の土地に野積みにしていたもので、被告人の会社は、この土地を残土置き場として運送会社から借りていた別の業者から、土地の整地を頼まれて請負い、機械を使ってタイヤの上に土を被せる工事を行ったのでした。
裁判所は、タイヤを所有管理していたのは運送会社であり、被告人は、タイヤの処分を委ねられたわけでもなく、土を被せる行為は廃棄物を「捨てた」とはいえず、廃棄物処理法違反は成立しないとして無罪を言い渡しました。
本件では、タイヤに土を被せることが、「捨てた」といえるかという法律解釈の問題もあるわけですが、それはひとまず置くとして、本件事案で処罰すべき者がいるとすれば、第一に大量のタイヤを野積みにしていた運送会社の社長であり、次に被告人に整地を依頼した業者だということになるのではないでしょうか。
運送会社の社長は、タイヤは保管していたもので捨てたものではないなどと主張し、土地を借りていた別業者も残土置き場の整地を頼んだだけだなどと主張したため、検察官は、廃タイヤに土を被せたことを認めていた被告人らを起訴したのでした。
私は、運送会社の社長を起訴できる証拠が集まらないのであれば、捜査はそこで止めるべきであって、「捨てた」について無理な解釈をしてまで被告人を起訴するようなことをすべきではなかったと思います。
本件についても何故このような起訴をしたのだろうかと驚いたものでした。


ポイント

本件のように本来処罰すべき者について証拠が集まらないときに、立場が弱く比較的証拠が集まりやすい者を立件して起訴するという事例は必ずしも少なくありません。しかし、そういった捜査・起訴には事実上・法律上の歪みが生じます。
弁護人としては、処理の不公平・不自然さに注目し、歪みのポイントを突いていくことになるのだろうと思われます。
なお、本件については、「廃棄物」「捨てた」の解釈のほかにも、整地を請け負って整地をしただけだという正当業務行為の主張が考えられるのではないかと思います。



東京の刑事弁護・刑事告訴のご相談は03-5293-1775まで
東京の刑事弁護・刑事告訴のご相談は03-5293-1775まで
刑事弁護・刑事告訴のお申込み