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無罪事件から学ぶ刑事弁護 その(2)

これまでは一般刑事事件について見てきましたが、今回は特殊な無罪事件について検討してみたいと思います。
検察官は、もとより森羅万象に精通しているわけではありませんから、ある業界で起きた事件・事故を捜査対象とする場合には、当該捜査対象企業の関係者、被疑者だけでなく、その業界に属する他社の関係者、所管行政官庁の担当者、専門家等から広く事情を聴取するなどして、業界における慣行、実情を解明した上で、事件立件の可否、要否を判断すべきであると思います。そういう手順を踏まずに机上で結論を出し、その結論にそぐわない供述は嘘であるとして排斥・無視し、その結論に見合う証拠だけを集めて起訴するようなことをすれば、たとえ事件が無罪になったとしても長期間にわたり起訴対象者を被告人席に縛り付け、本人はもとより、その家族、関係者等をも回復困難な悲惨な状況に陥れることになりかねません。検察官にはこのことをよくよく理解してもらいたいものですし、弁護人としては、そのような不幸な結果とならないよう、検察官に正当な判断をしてもらうための資料を提供すべきであると思います。
そして大きな事件・事故の場合、マスメディアの果たす役割も重要です。捜査機関からの一方的な情報を報道することによって世論を一定の方向に誘導してしまいがちですし、取材攻勢が、時には関係者を自殺に追い込むことにもなりかねません。関係者がどんな供述をしているとか、いつ逮捕されるとかいうことは、ほとんどの読者・視聴者にとってそれほど関心があることだとは思えません。業界内の特ダネ争いなどしないで、冷静・公平で、深みのある報道をしてもらいたいものです。
このような観点から、二つの事件を取り上げてみたいと思います。

弁護士 粂原 研二